注文住宅で住宅ローンを利用する際の注意点【完全ガイド】
注文住宅でマイホームを建てる際、多くの方が住宅ローンを利用します。しかし、建売住宅と比べて注文住宅の住宅ローンには特有の流れや注意点があります。建売住宅での住宅ローンと同じように考えると、戸惑ってしまうかもしれません。本記事では、注文住宅における住宅ローンの基本的な仕組みから、利用時に気を付けたいポイントまでをわかりやすく解説します。
注文住宅の住宅ローンの基本と流れ
まずは、注文住宅で住宅ローンを利用する場合の流れとローンの組み方について解説します。
注文住宅で住宅ローンを利用する全体の流れ
注文住宅の場合、土地の購入と建物の建築がセットになるため、一般的な住宅ローンの流れも少し複雑になります。
1 事前審査(仮審査)
2 本審査
3 ローン契約締結
4 融資実行(資金の受取)
基本的に、注文住宅の住宅ローンは事前審査(仮審査)を受けたあと、土地の売買契約や建物の請負契約をして、本審査へとうつります。本審査は、事前審査よりも詳しく内容がチェックされ、先に行った土地の売買契約等の書類も提出することとなります。
本審査を通過すると、借入金額や金利、返済期間などが決まり、ローン契約を行います。住宅ローンの融資は、家の引き渡しと同時に行われるため、融資の実行(資金の受け取り)は建物の完成時です。
しかし、注文住宅の場合、契約金や中間金といった、工事の途中で代金を支払うタイミングがあるため、ローン実行前に自己資金を用意しなければならない点に注意しましょう。金融機関によっては、必要に応じてつなぎ融資の相談も可能ですので、早めに相談されることをおすすめします。
土地と建物の資金調達パターン別のローン組み方
注文住宅の住宅ローンには、土地の有無や購入時期に応じて主に次のようなパターンがあります。
土地を既に所有している場合
建築費用のみを対象に住宅ローンを組みます。土地代が不要な分、シンプルに建物分の融資手続きを行うこととなります。
土地購入費用と建築費用をまとめて借りる場合(一体型ローン)
土地代と建築費用を一本化して1本のローンで借入れる方法です。土地購入時に契約を結び、建物完成時にまとめて融資が実行されます。必要に応じて契約から実行までの間につなぎ融資を利用するケースもあります。
土地購入費用と建築費用で別々に借りる場合(分離型ローン)
土地代用と建物用に2本の住宅ローンを組む方法です。まず土地購入のためのローンを契約・実行し、後日建物完成時に建物用ローンを契約・実行します。土地ローン実行から建物完成まで期間が空くため、金利変動や返済計画に注意が必要です。
どのパターンを選ぶかは、手持ち資金や土地の有無、利用する金融機関の商品によって異なります。それぞれメリット・デメリットがあるため、事前によく比較検討して自分に合った借り方を選びましょう。
注文住宅ならではのローン手続き上の特徴
建売住宅(出来上がった家を買う場合)の住宅ローンでは、物件引き渡し時に一度だけ融資が実行されます。しかし注文住宅では建物完成前に支払いが発生するのが大きな特徴であり注意点です。。
具体的には、土地代金の決済や、建築工事の契約金・中間金などが該当し、これらは住宅ローンの本契約前に必要となる資金です。そのため、注文住宅ではつなぎ融資や分割融資といった、住宅ローン実行前に一時的に資金を借りる仕組みを利用するケースも珍しくありません。これらを利用する際は通常の住宅ローンとは手続きや条件が異なるため、これからご紹介する注意点を踏まえて準備することが大切です。
金利タイプと返済計画の注意点
住宅ローンで借りる金額はかなりの多額となるため、金利についてよく知っておく必要があるでしょう。ここからは、金利タイプ別の特徴や選び方についてご紹介します。
固定金利・変動金利など金利タイプの選び方
住宅ローンの金利タイプは、大きく分けて「固定金利型」と「変動金利型」の2種類に分かれます。
固定金利型は、返済期間中の金利がずっと一定で変わることはありません。したがって、金利上昇による影響を受けず、毎月の返済額が安定するというメリットがあります。しかし、初期金利が変動金利型よりもやや高くなる傾向にあります。
一方、変動金利型は、返済期間中に金利が変更する点が特徴です。市場金利によって金利は変動するため、金利が低い時期は支払額も少なくなり、逆に金利が高くなると返済額は増加します。リスクもありますが、長期的に見ると固定金利型より低い金利で済むケースも多いです。
このように、金利タイプごとにメリット・デメリットが異なるため、自身の返済計画やリスク許容度に合わせて選ぶことが重要です。例えば、「毎月の返済額を一定にして計画的に返したい」なら固定型を、「当初の負担を軽くしつつ金利動向に応じて見直したい」なら変動型を検討すると良いでしょう。
返済期間や返済方法を決める際のポイント
返済期間や返済方法は、無理なく生活を圧迫しない程度に設定することが大切です。返済期間は、長くすれば毎月の負担が軽くなるぶん総支払利息は増えます。しかし、短くしすぎると毎月の支払負担が大きくなり、日々の生活が苦しくなるかもしれません。
ボーナス時に加算返済を組む人も多いですが、万が一、ボーナス減額や支給停止が起こった時のことも考えて、こうした場合にも返済が滞らない範囲にしておくのが無難です。子どもの成長に伴い学費の負担が増えたり、自家用車を買い替えたりと、まとまった金額が必要になるタイミングは他にも訪れます。
住宅ローンの返済で精一杯、という事態にならないように、住宅ローンで借りる金額と返済方法・期間については慎重な判断が必要です。
借入可能額ではなく「返せる額」で計画する
住宅ローンを計画する際、どのくらいの金額を借りることができるのか、金融機関から提示されます。これを、借入可能額と呼びます。借入可能額いっぱいに借りると、そのぶん理想の住まいが実現しやすくなるかもしれませんが、あまりおすすめできません。なぜなら、金融機関が提示する審査上の借入可能額は、家計が許容できる額よりも大きくなることが多いからです。
あくまでも、借入可能額いっぱいで検討するのではなく、将来的に無理なく返済できる金額をもとに借りることが肝心です。生活費や将来の貯蓄、急な出費に支障がでないように、バランスを考えてゆとりある生活との両立を図りましょう。
住宅ローン利用時に発生する費用とその注意点
住宅ローンの利用時には、利息以外のお金が発生する点に注意が必要です。具体的に、どのような費用がかかるのか見ていきましょう。
住宅ローンにかかる主な諸費用
住宅ローンの諸費用として、主なものに、融資事務手数料、保証料、団体信用生命保険料、契約書に貼る印紙税、登記関連費用(抵当権設定登記費用)などがあります。これらの費用はローン元本や利息とは別に初期費用として数十万円規模で必要になる場合が多いため、事前に見積もりを取りしっかり把握しておきましょう。
金融機関によっては諸費用込みのローン商品や、保証料ゼロで金利に上乗せするタイプの商品もあります。また、火災保険料や地震保険料も長期一括払いするケースがあり、住宅取得時にはローン以外の費用もまとめてかかる点に注意が必要です。
つなぎ融資・分割融資利用時の金利負担に注意
注文住宅では、家の完成前に土地代金の決済や工事の中間金など、まとまった金額の支払いが発生することをご紹介しました。その費用を工面する方法として、つなぎ融資や分割融資といった方法があります。
しかし、つなぎ融資や分割融資は、通常の住宅ローンに比べて金利が高めに設定されています。実際、2024年時点の住宅ローン金利(固定10年・フラット35)が年1~1.9%程度なのに対し、つなぎ融資の金利相場は年2~4%程度とされています。
そのため、つなぎ融資を利用する場合は工期の長期化による利息負担増に注意しましょう。つなぎ融資期間中は毎月利息のみ支払うケースが多く、その利息分も自己資金で賄う必要があります。
また、分割融資の場合も、融資回数や金額に上限があるうえ、一回一回の融資ごとに手数料がかかる金融機関もあります。これらの追加コストを含めたうえで総支出を計算し、予算オーバーとならないよう、事前によく説明を受けて決めていきましょう。
頭金・手付金など自己資金で賄う費用の準備
注文住宅の計画では、頭金(自己資金)や土地・建物契約時の手付金など、ローン実行前に現金で用意しなければならない費用があります。例えば土地の売買契約時には手付金として代金の一部を現金で支払い、工事請負契約時にも着手金を支払うケースが一般的です。これらはローンからはすぐには支払えないため、事前に自己資金を準備しておかなければなりません。
一般的に住宅ローン利用時には、物件総額の20~25%程度を自己資金として用意するのが望ましいと言われています。ただ、実際の平均では自己資金割合が30%前後に達するケースもあるため、余裕を持った自己資金確保を目指しましょう。
十分な頭金を準備することで、借入額を抑えて月々の返済負担を軽減できるだけでなく、ローン審査上も有利になります。また契約時の急な支払いにも対応でき、資金計画にゆとりが生まれます。
注文住宅の住宅ローンで後悔しないためのポイント
注文住宅の住宅ローンを組む前に、知っておきたいポイントを整理しました。後悔しないためにも、よく確認して申し込みましょう。
複数の金融機関のローン商品を比較・検討する
注文住宅向けの住宅ローンは、利用できる金融機関が限られる場合がある点に注意しましょう。銀行によっては注文住宅向けの融資(つなぎ融資や分割融資)を取り扱っていなかったり、条件が大きく異なったりします。
そのため、ローンを検討する際は一つの銀行だけでなく複数の金融機関の商品を比較することが大切です。金利水準だけでなく、つなぎ融資の有無や手数料、繰上返済手数料の条件なども含めて総合的に検討しましょう。
各社の住宅ローンの特徴を調べ、自身の計画に最適な金融機関を選ぶことで、後々の資金繰りを安定させることができます。
将来を見据えたライフプランと金利変動リスクへの備え
住宅ローンは契約から最終返済まで長期にわたります。注文住宅では契約から融資実行までにタイムラグがあるため、ローンを組んだ時点と実際に融資が実行される時点で、市場金利が変動し金利条件が変わってしまう可能性もあります。特に建築期間中に金利上昇局面が来ると、当初想定より総返済額が増えるおそれがある点に注意が必要です。
変動金利型を選んでいる場合は、返済中の将来的な金利上昇にも備え、ローン契約前に金利上昇シュミレーションを行いましょう。
また、家族の将来設計(子どもの教育・独立や自分たちの定年退職時期など)を踏まえて、適宜繰上返済をする計画や、万一収入が減少した場合の備え(予備費の確保、共働きの検討など)も考えておくと安心です。長期のライフプランに沿った資金計画を立てることで、途中での計画見直しにも柔軟に対応できるでしょう。
専門家への相談や公的制度の活用も検討する
注文住宅の資金計画に不安がある場合は、早めに専門家へ相談することも有効です。住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナー(FP)や住宅販売会社の資金相談窓口などに相談すれば、第三者の視点で適切なアドバイスをもらえます。
また、住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)などの公的支援制度や、住宅金融支援機構の【フラット35】など固定金利の公的ローンの活用も検討しましょう。さらに、万一に備えて住宅完成保証制度に加入しておくと、建築中に工務店が倒産した場合でも追加資金負担なく家を完成させられるため安心です。様々な制度やサービスを上手に活用し、不安要素を減らすことで、安心して注文住宅と住宅ローンの計画を進めることができます。
まとめ
今回は、注文住宅の住宅ローンについて、基本的な仕組みや注意点をご紹介しました。長期にわたり返済することとなる大きな決断だからこそ、事前にしっかりとした情報収集と準備が重要です。自分に合ったローン計画を立て、理想のマイホームで無理のない安心した暮らしを実現しましょう。